「北鎌フランス語講座 - 文法編」と連動し、短い例文を使って徹底的に文法を説明し、構文把握力・読解力の向上を目指します。

フランス語原文で聖書を読む

聖書

この「読解編」の「聖書」のページでは、どの分野に関心がある人でも知識として知っておいて損はない最もポピュラーな話として、聖書を取り上げます。なるべく宗教的な話は抜きにして、純粋にフランス語の力を高めることを主眼として解説していきます。論理的な文体にも、小説・物語の文体にも触れることができます。

テキストは基本的に La Bible de Jérusalem を使用します。理由は、格調高い魅力的なフランス語で訳されているとともに、現代の厳密な校訂を経た版として広く支持を得ているからです。ただし「聖書名言集」のページでは、名言という性質上、古くから親しまれてきた Sacy 訳聖書を多く使用する予定です。いずれもカトリック系の訳ですが、フランスはカトリックが大多数の国(※注)なので、偏っていることにはならないと思います。

【文法解説】
   ⇒ 天地創造(創世記)
   ⇒ 迷える羊(マタイ/ルカによる福音書)
   ⇒ 裏切りの予告(ヨハネによる福音書)
   ⇒ ペトロの否認(マルコによる福音書)
   ⇒ イエスの死(ヨハネによる福音書)
   ⇒ 聖書名言集
   ⇒ 主の祈り

     (追加予定)

フランス語訳聖書

インターネットで閲覧可能なフランス語訳聖書を以下にリストアップしておきます。

下記のリストで明らかなように、プロテスタント系のほうが多くのフランス語訳聖書が存在します。これは、プロテスタント系の人々のほうが聖書に書かれていることに依拠しようとする傾向が強いことも一因だと思われますが、歴史的には、キリスト教ではラテン語を使うのが当然と考えられていたために、フランス語訳が生まれにくかったという事情があります。
フランスの中世では、聖書の忠実な翻訳はほとんど存在せず、聖書に出てくるストーリーをもとに叙事詩のように仕立てた、いわば「聖書物語」のような作品や、イエスの生涯を扱った受難劇、あるいは聖者伝などが中心だったようです。

【カトリック系】

Nouveau Testament (1476)
フランス最古の印刷業者の一つ、バルテルミー・ビュイエ(Barthélemy Buyer)がリヨンで印刷した、ウルガータに基づく新約聖書。印刷されたフランス語訳聖書としては最初期のものです。 écriture gothique で書かれています。
BVH (画像形式。リンク先の画像をクリックすると開きます)

Nouveau Testament traduit par Lemaistre de Sacy (1667, 1696)
「サシ訳」聖書。「ポール・ロワイヤル版」とも呼ばれます。『パンセ』で有名なパスカルも翻訳に加わり、ドイツにおけるルター訳聖書と同様、近代フランス語の形成に甚大な影響を与え、多くの文学者が愛読しました。ギリシア語等も参照されたようですが、基本的にはウルガータ(ラテン語訳聖書)からのフランス語訳のようです。
Wikisource (1667, 1759)
1667 版1672 版 (a)1672 版 (b) (以上 Google Books)
Gallica BnF (画像形式)

la Bible catholique Crampon (1894-1904)
ヘブライ語、アルメニア語、ギリシア語から翻訳された、ほとんど初のカトリック系の訳。20 世紀中頃までよく読まれたようです。奥床しいフランス語で訳されていますが、「サシ訳」と同様、神に対して vous で呼びかけている点が古めかしく感じられ、敬遠される理由の一つとなっているようです。
JesusMarie.com (1923)
Wikisource (1923)

La Bible de Jérusalem (1956)
「エルサレム聖書」。現在、フランスで最も読まれている聖書と言われています(出版元および競合他社の説明による)。プロテスタントからも一目置かれています。
本ホームページでは主にこの訳を使用しています。
La bibliothèque du Cerf (画像形式)
sosparanormal (左上の「Nouveau Testament Audio」から新約のみ朗読ファイルをダウンロード可能、ただし最新版と若干字句が相違している可能性あり)

La bible de la liturgie
『典礼聖書』。フランスのカトリック教会におけるミサや典礼で使用されている、バチカン公認のフランス語訳聖書。
AELF (仏語圏諸国典礼司教協会)

【プロテスタント系】

La Bible d'Olivétan (1535)
ジャン・カルヴァンの遠い親戚にあたるオリヴェタン(Olivétan)による訳。ヘブライ語とギリシア語から訳されたプロテスタント初のフランス語聖書。 écriture gothique で書かれています。
Le Vigilant.com (1535) (画像形式)
Google Books (1535) (画像形式)
BVH (1538) (画像形式。リンク先の画像をクリックすると開きます)

La Bible de Genève (La Bible de l'Épée) (1546-1588)
上記オリヴェタンによるフランス語訳聖書をジャン・カルヴァンが改訂したもの。
Le Vigilant.com ; Google Books (1550) (画像形式)
Le Vigilant.com (1551) (画像形式)
Le Vigilant.com (1564) (画像形式)

La Bible de Louvain (1550‑1608)
ルフェーヴル・デタープル(Lefèvre d'Étaples)が 1530 年にフランス語に訳したものを、ベルギーのルーヴァン(ルーヴェン)大学の神学者達が改訂して出版したもの。
Google Books (1587) (画像形式)

La Bible de David Martin (1707)
1685年のナントの勅令廃止によりオランダに逃れたダヴィッド・マルタンによる訳。カルヴァンBible de Genève をベースにしています。オランダのカルヴァン派の教会会議から公式の認可を得て有名になったようです。文豪ヴィクトル・ユゴーが好んだ訳。
biblemartin.com (1744)

La Bible d’Ostervald (1744)
David Martin 訳をベースにした訳。19 世紀末までプロテスタントの間で広く読まれました。
TopChrétien.com
Le Vigilant.com (1877)

La Bible de Louis Segond (1880)
「ルイ・スゴン」版。刊行以来、プロテスタントで最も読まれきた古典的な訳です。ただし、近年刊行された「La Nouvelle Bible Segond」や「Segond 21」などの改定バージョンは、語彙が平板になって文学的な魅力が低下したように感じられます。元のバージョン(下記 Wikisource で閲覧可能)のほうが文学性という点では優れているといえると思います。
Wikisource (1880, 1910)
Alliance biblique française (La Nouvelle Bible Segond, 2002)
Bibleserver.com (Segond 21, 2007)

La Sainte Bible de John Nelson Darby (1885)
数カ国語に堪能だったイギリス人ジョン・ネルソン・ダービーによる訳。
Wikisource (1872)
Ecouter la Bible Lue (朗読)

La Colombe (1978)
「ルイ・スゴン」版をベースに、語彙などを現代風に直したもの。
Alliance biblique française

La Bible en français courant (1982)
その名の通り、話し言葉に近い文体で訳されています。
Alliance biblique française

Bible du Semeur (1992)
話し言葉に近い文体で訳されています。
Bibleserver.com

La Bible Parole de Vie (2000)
Alliance biblique française
条件法・接続法は極力使わず、単純過去・前過去・前未来・大過去さえもほとんど使わず、ほぼ現在形を主体にして訳された、幼稚ともいえるフランス語で訳されています。ただ、もともと第二外国語としてフランス語を使うアフリカ人の要望に応えて出来たものなので、それなりに意義のある訳だといえるかもしれません。

その他
プロテスタントの改革派(カルヴァン派、Réformateurs)の聖書を集めたサイト:
Le Vigilant.com (以上でもいくつか取り上げています)

【カトリック&プロテスタント】

La Traduction Œcuménique de la Bible (1975)
カトリックとプロテスタントによる共同訳。「TOB」と略されます。フランス語的には平易すぎず、難解でもなく、フランス語中級者が一人で読むには一番お薦めできます。
ちなみに、「œcuménique」は「エキュメニック」と発音し、要するに「カトリック/プロテスタント共同での」という意味です。
Alliance biblique française (nouvelle édition, 1988)
La bibliothèque du Cerf (画像形式)

【その他】

La Bible Chouraqui (1985)
ユダヤ系の思想家アンドレ・シュラキによる、これ以上ないほどの究極の逐語訳。新約聖書のことを Un Pacte Neuf と訳すなど、従来の用語は完全に無視しています。極端ですが、それなりに高い評価を得ています。
La Bible et Le Coran D'André Chouraqui En Ligne

Traduction du monde nouveau
フランスでは「セクト」に分類されているエホバの証人(Témoins de Jéhovah、TJ と略)による「新世界訳聖書」のフランス語版(TMN と略されます)。それを承知の上で、閲覧するなら閲覧する必要があります。
Wikipédia の « Traductions de la Bible en français » (フランス語訳聖書)の項目の末尾の « Diverses Bibles en ligne » (各種オンライン辞書)の 1 番目にリンクが張られています。

参考:各種フランス語版聖書の訳を対照できるサイト
La Référence Biblique djep

参考:オンラインフランス語版聖書のリンク集
Lexilogos

参考:フランス語訳聖書の歴史
La Bible en français du XVe au milieu du XXe siècle (Alliance biblique française)
Traductions de la Bible en français (Wikipédia)



【ウルガータ(ラテン語訳聖書)】

ウルガータは大きくわけて 3 種類あります。

1. ヒエロニムス訳(Vulgate de Saint Jérôme)
  4 世紀終わり~ 5 世紀初頭の聖ヒエロニムス(347?-420)による訳
The Latin Library
Bibliotheca Augustana

2. シクスト・クレマンティーヌ版(Vulgate sixto-clémentine)
  1592 年に教皇シクストゥス 5 世とクレメンス 8 世によって完成
Vulgate clémentine (Le projet de la Vulgate clémentine)
Vulgate clémentine, 1914 (Internet Archive)

3. バチカンの新ウルガータ(Nouvelle Vulgate)
  20 世紀に完成
Nouvelle Vulgate (Vatican)



使用した日本語訳聖書

1. 舊新約聖書(「文語訳」)
2. 新共同訳聖書(「新共同訳」)
3. フランシスコ会聖書研究所の聖書(2011年 合本版)(「フランシスコ会訳」)

その他、

Wikisource では、ヘボン訳新約聖書(明治 4 年等)などの古い訳も閲覧可能。

bible.salterrae.net では、古い口語訳聖書やラゲ訳などが閲覧可能。










(※注)
フランス政府が宗教・信条について調査を行うことはないため、公的な統計結果は存在しませんが、雑誌などで時々アンケートが行われています。
昔はフランスの人口のほぼ全員がカトリックだった時期もあるようですが(ナントの勅令廃止後)、時代とともに減少し、現在では大雑把に言って全人口に占めるカトリックの割合は 60 ~ 65 % 前後のようです。プロテスタントは 2 % ぐらいですが、若い世代での割合が伸びているようです。また移民の増加により、イスラム教が 5 ~ 10 % ぐらいに達しているようです。







なお、一応キリスト教に対する本ホームページの筆者の立場を書いておきます。
筆者は、残念ながらカトリックでもプロテスタントでもなく、何らかの団体に属しているわけでもありません。ほとんど教会にも行ったことがありませんので、その意味では信者ですらなく、時として敬意や共感を抱いているだけです。
そういった意味では、本当の信者の方は、このホームページをご覧になって歯がゆい思いをされるかもしれませんが、以上のようなわけで、どうかご寛容のほどを。








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