「北鎌フランス語講座 - 文法編」と連動し、短い例文を使って徹底的に文法を説明し、構文把握力・読解力の向上を目指します。

フランス語原文でルソーを読む

ルソー『エミール』

このページでは、ルソーの『エミール』の中の、人生の短さについて述べた有名なくだり(第 4 編冒頭)を、「文法編」の説明に基づいて一文ずつ解説します。
名文である上に、中性代名詞 en が何回か出てきて、文法的にも有益です。

  Que nous passons rapidement sur cette terre ! le premier quart de la vie est écoulé avant qu'on en connaisse l'usage ; le dernier quart s'écoule encore après qu'on a cessé d'en jouir. D'abord nous ne savons point vivre ; bientôt nous ne le pouvons plus ; et, dans l'intervalle qui sépare ces deux extrémités inutiles, les trois quarts du temps qui nous reste sont consumés par le sommeil, par le travail, par la douleur, par la contrainte, par les peines de toute espèce. La vie est courte, moins par le peu de temps qu'elle dure, que parce que, de ce peu de temps, nous n'en avons presque point pour la goûter. L'instant de la mort a beau être éloigné de celui de la naissance, la vie est toujours trop courte quand cet espace est mal rempli.

Que nous passons rapidement sur cette terre !

この「Que」は、文末に感嘆符がついているのでわかるように、感嘆詞の que で、「何と ...なことか」という意味です。
「passons」は自動詞 passer (通過する、通り過ぎる)の現在(1人称複数)。
「rapidement」は副詞で「速く」。
「sur」は前置詞で「~の上で」。「cette」は指示形容詞で「この」。「terre」は女性名詞で「地球」。

【逐語訳】
私達はこの地球上で、何と速く通り過ぎることだろう。

le premier quart de la vie est écoulé avant qu'on en connaisse l'usage ;

 le premier quart de la vie est écoulé

「premier」は形容詞で「最初の」。「quart」は男性名詞で「4 分の 1」。
「vie」は女性名詞で「人生、生活、生命」。
「le premier quart de la vie」で「人生の最初の 4 分の 1 」。これが主語です。
「est」は être の現在(3人称単数)。

「écoulé」は、もともと écouler という動詞の過去分詞ですが、むしろ形容詞化していると取ったほうがわかりやすく、「écoulé」で「(時間が)過ぎ去った」という意味です。大きな辞書だと「écoulé」が形容詞として載っており、例えば『小学館ロベール仏和大辞典』には

  les années écoulées (過ぎ去った年月)
  réfléchir sur sa vie écoulée (自らの歩んできた歳月を省みる)

などの例文が載っています。〔注〕
ただし、「(時や人生が)流れ去る、過ぎ去る」という意味では、écouler は通常は再帰代名詞と一緒に使われるので、(あとでセミコロンの後ろで出てくるように)「s'écoule」を使って、

  le premier quart de la vie s'écoule

と表現するのが普通です。

 avant qu'on en connaisse l'usage

「avant que...」は「...する前に」。「...」の部分の動詞は接続法になると決まっているので、「connaisse」は connaître (知る)の接続法現在(3人称単数)になっています。
「usage」は男性名詞で「使用、使い方」。

「en」は動詞の直前にあるので中性代名詞の en で、結論からいうと「de + 物」に代わる en のうちの「名詞に掛かる(訳:「その」)」に相当します。この部分を中性代名詞 en を使わないで書き換えると、次のようになります。

  avant qu'on connaisse l'usage de la vie (人生の使い方を知る前に)

この「la vie」が前に出てきたので代名詞に置き換えたいわけですが、置き換えたい言葉の前に前置詞 de がついているので、de を含めて中性代名詞 en に代わり、動詞の直前に移動しているわけです。

セミコロンはピリオドとコンマの中間ぐらいの切れ具合を示す記号で、特にそれ自体には意味はありません。

【逐語訳】
人生の最初の 4 分の 1 はその使い方を知る前に過ぎ去ってしまう。

le dernier quart s'écoule encore après qu'on a cessé d'en jouir.

「dernier」は形容詞で「最後の」。「le dernier quart」で「最後の 4 分の 1 」となります。
「écoule」は écouler の現在(3人称単数)。この前の再帰代名詞 se は「熟語的」と取るしかなく、s'écouler で「(時や人生が)流れ去る、過ぎ去る」という意味です。

「après que...」は「...したあとで」という意味。「...」の部分の動詞は直説法になります。
さきほどの「avant que... (...する前に)」の後ろは接続法になるのに、「après que... (...したあとで)」の後ろは直説法なのはなぜかというと、そういう決まりだからといえばそれまでですが、あえて理屈を言うなら、「après que...」の場合はし終わった事柄なので、事実であることが確定しているわけですが、「avant que...」の場合はまだこれから起こる事柄なので、事実か事実に反するか(実際に行われるか行われないか)わからない状態であるために接続法になるということができます。

「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「cessé」は cesser (やめる)の過去分詞(ちなみに英語に入ると少し綴りが変わって cease となります)。この動詞は、

  cesser de + inf. (~するのをやめる)

という使い方をします。

「jouir」は基本的には前置詞 de と一緒に使う間接他動詞で、

  jouir de ~ (~を楽しむ、享受する)

という意味です。この de の後ろのものが代名詞になったために、ここで中性代名詞 en が使われています。この部分を中性代名詞 en を使わないで書き換えると、次のようになります。

  après qu'on a cessé de jouir de la vie (人生を楽しむのをやめたあとで)

さきほどと同様、「de la vie」が en に置き換わって動詞の直前に移動しています。
この en は「文法編」の分類でいうと、「de + 物」に代わる en のうちの「 de を伴う間接他動詞に掛かる」に該当します。

【逐語訳】
最後の 4 分の 1 は人生を楽しむのをやめたあとで過ぎ去る。

D'abord nous ne savons point vivre ; bientôt nous ne le pouvons plus ;

「d'abord」は「まず、最初に」という意味の熟語(辞書で abord を引くと載っています)。
「savons」は他動詞 savoir (知っている)の現在(1人称複数)。
ただし、「知っている」のほかに、後ろに不定詞がくると「~するすべを知っている」「~できる」という意味(この場合は pouvoir とほとんど同じ意味)にもなります。英語の know が can と似た意味になることがあるのと同様です。

「ne... point」は「まったく... ない」という強い否定。
「vivre」は自動詞で「生きる」ですが、ここでは『ロワイヤル仏和中辞典』に記載されている「人生を享受する」という訳を使ってみましょう。

「bientôt」は副詞で「まもなく、やがて」。
「pouvons」は pouvoir (できる)の現在(1人称複数)。
「ne... plus」は「もはや... ない」
その直前の「le」は、前に出てきた男性名詞 1 語を指しているわけではないので、「そのことを」という意味の中性代名詞です。
「le」を使わないで言い換えると次のようになります。

  bientôt nous ne pouvons plus vivre

ちなみに、この部分は、

  Si jeunesse savait, si vieillesse pouvait.

という諺を連想させます。

【逐語訳】
最初は、私達は人生を享受するすべをまったく知らない。やがて、私達はもはや人生を享受することができなくなる。

et, dans l'intervalle qui sépare ces deux extrémités inutiles, les trois quarts du temps qui nous reste sont consumés par le sommeil, par le travail, par la douleur, par la contrainte, par les peines de toute espèce.

 et, dans l'intervalle qui sépare ces deux extrémités inutiles,

「intervalle」は女性名詞で「間隔、隔たり」。
「sépare」は他動詞 séparer の現在(3人称単数)。
「ces」は指示代名詞 ce の複数形で「これらの」。「deux」は数詞で「2 つの」。
「extrémité」は女性名詞で「端(の部分)、極端」。
「inutile」は形容詞で「役に立たない、無益な」。
「qui... inutiles」がカッコに入って(関係詞節になって)、先行詞の「l'intervalle (隔たり)」にかかっています。

 les trois quarts du temps qui nous reste sont consumés

「trois」は数詞の「3」。「quart」は男性名詞で「4 分の 1」なので、「les trois quarts」で「3 つの 4 分の 1」、つまり「4 分の 3」となります。「temps」は男性名詞で「時間、期間」。

「reste」は rester (残っている)の現在(3人称単数)。
この動詞は、次の使い方が基本です(「à B」は状況補語と捉えられ、rester は自動詞扱いになります)。

  A reste à B. (A が B には残っている)

基本的に「A」の部分に「物」、「B」の部分に「人」がきます。
ここでは「A」に相当するのは「temps」ですが、正確には、縮約形「du」を de と le に分けたうちの le を含む「le temps」が「A」に相当します。そして「à B」に相当するのが「nous」です。これは、「前置詞 à + 人」は、代名詞に置き換わると間接目的一語になり、 à は消えるからです。
「qui」は関係代名詞で、「qui nous reste」がカッコに入って(関係詞節になって)、前の先行詞「le temps」に掛かっています。
「le temps qui nous reste」で「私達に残っている時間」となります。
そして、「les trois quarts du temps qui nous reste (私達に残っている時間の 4 分の 3 は)」という部分が大きな主語になって、後ろ続きます。

「sont」は être の現在(3人称複数)。「consumés」は他動詞 consumer (消費する、費やす)の過去分詞 consumé に、男性複数を示す s がついた形。être + p.p. で受動態になっていますが(「費やされる」)、être + p.p. の場合は、主語に性数を一致するので、主語(1 語で言うと「quarts」)が男性複数であるのに合わせて s がついています。

 par le sommeil, par le travail, par la douleur, par la contrainte, par les peines de toute espèce.

何によって「費やされる」のかが、前置詞 par (~によって)の後ろに列挙されています。順に、「sommeil (眠り)」、「travail (仕事)」、「douleur (苦しみ)」、「contrainte (強制、束縛)」。すべて冠詞がついているので、男性名詞か女性名詞かは辞書を見なくてもわかります。どれも概念化されているので定冠詞がついています。

このうち、「contrainte (強制、束縛)」は、もともと他動詞 contraindre (強制する)の過去分詞 contraint (強制された)に e がついて女性名詞化してできた単語なので、「強制されたこと」ないし「強制されること」という受身的なイメージが残っている言葉です。

「peine」は女性名詞で「苦痛、苦労」。
「espèce」は女性名詞で「種類」。
その前の tout (女性名詞 espèce に合わせて e がついています)は、「すべての」というのが一番代表的な意味ですが、単数・無冠詞だと「あらゆる」という感じになります。
「les peines de toute espèce」で「あらゆる種類の苦痛」となります。

【逐語訳】
そして、この役に立たない 2 つの端の部分を隔てる隔たりの中で、私達に残されている時間の 4 分の 3 は睡眠、仕事、苦しみ、束縛、あらゆる種類の苦痛によって費やされる。

〔補足〕
内容的に補足しておきますと、人生の最初の 4 分の 1 (幼年期)と最後の 4 分の 1 (老年期)を除くと、4 分の 2、つまり 2 分の 1 になります。これが「le temps qui nous reste (私達に残されている時間)」です。しかし、そのうちの 4 分の 3 は、睡眠や仕事やら、したくないことによって費やされるので、本当に自由に楽しめるのは、2 分の 1 のうちの 4 分の 1、つまり 8 分の 1 だけだ、ということになります。

La vie est courte, moins par le peu de temps qu'elle dure, que parce que, de ce peu de temps, nous n'en avons presque point pour la goûter.

 La vie est courte,

「vie」は女性名詞で「人生、生活、生命」。
「court」は形容詞で「短い」。主語(La vie)が女性単数なので e がついています。

「La vie est courte (人生は短い)」というのは、ありふれた言葉ですが、なぜ短いのかということが、以下で説明されています。

 moins par le peu de temps qu'elle dure,

「moins」は「劣等比較」の表現で、比較の que と一緒に使われますが、ここでは

  moins A que B (A というよりも、むしろ B)

という使い方をしています。A と B は同じ品詞(または文の中で同じような役割を果たす言葉のグループ)が来ます。
例えば、『ディコ仏和辞典』には次のような例文が載っています。

  Il est moins artiste qu'artisan. (彼は芸術家というより、むしろ職人だ)

あるいは、『ロワイヤル仏和中辞典』には次のような例文が載っています。

  Il est moins généreux qu'indifférent. (彼は寛大というより無頓着なのだ)

このルソーの文では、A に相当するのが「par le peu de temps qu'elle dure」、B に相当するのが「parce que, de ce peu de temps, nous n'en avons presque point pour la goûter」です。どちらも、人生が短いことの理由となっています。
つまり、「人生は短いが、それは A によってというよりも、B だからなのだ」となっています。

「peu de + 名詞」は「わずかの~」という意味です(辞書で peu を引くと、最後のほうに載っています)。
「temps」は男性名詞で「時間」。
その後ろの「qu'」は関係代名詞ですが、先行詞が関係詞節内の動詞の OD ではない que先行詞が「時」になる que)です。
「elle」は「La vie (人生)」を指します。
「dure」は自動詞 durer (持続する、続く)の現在(3人称単数)。

「par le peu de temps qu'elle dure」で逐語訳すると「人生が続くわずかな時間によって」。要するに、「人生が続く時間がわずかだから」という意味になります。

 que parce que, de ce peu de temps, nous n'en avons presque point pour la goûter.

「parce que (...なので)」(英語 because)の後ろにコンマがありますが、2 つのコンマの間(de ce peu de temps)は挿入句なのでカッコに入れて考えます。

「parce que, 」の直後の前置詞「de」は、「~の中で、~のうちで」(全体の中の一部や部分を表す)という意味です。「ce」は指示形容詞で「この」。「peu de + 名詞」は、先ほど出てきた「わずかの~」。
「de ce peu de temps」で「このわずかな時間の中で」となります。

「en」は、フランス語で 3 種類ある en のうち、動詞の直前にあるので中性代名詞の en です。少し難しいので後回しにして、他の部分から見ていきます。
「avons」は他動詞 avoir (持つ)の現在(1人称複数)。「ne... point」で「まったく...ない」という強い否定。
「presque」は副詞で「ほとんど」。このように、副詞は単純時制の場合は、動詞の直後に置くのが普通です。
前置詞「pour」は「~するために」または「~するための」。
「la」は何を指すかというと、前に出てきた女性名詞は一つしかありません。「la vie (人生)」を指します。
「goûter」は他動詞で「味わう、享受する」。ちなみに、前置詞 de を伴う間接他動詞として goûter de で「~を試食する」などの意味もありますが、ここでは直接他動詞として使われています。

ここで、問題の「en」に戻りましょう。
「nous n'en avons presque point pour la goûter」は、「en」だけ訳さないと、「それ(=人生)を味わうために、私達は en をほとんどまったく持っていない」となります。

文の要素に分けると、最後の「pour la goûter」は目的を表す状況補語です。副詞は文の要素に分けるときは除外します。「nous」が主語(S)、「avons」が動詞(V)、そしてこの avoir (持つ)は他動詞なので、「en」が直接目的(OD)ということになります。
とすると、この中性代名詞の en は「中性代名詞 en その 2 :不特定の同類の名詞を指す en 」ということになります(この en は、基本的にもとの文で直接目的(OD)となる名詞に置き換わります)。
意味的に考えて、「それ(=人生)を味わうために、私達は en をほとんどまったく持っていない」と言った場合、「en」は「時間」を指すと見当がつくかと思います。

中性代名詞「en」を使わないで書き換えると、次のようになります。

  nous n'avons presque point du temps pour la goûter
    (それを味わうために、私達は時間をほとんどまったく持っていない)

「temps (時間)」の前についている「du」は部分冠詞です。
「temps」という名詞は、定冠詞などがつく場合もあれば、捉え方によっては部分冠詞がつくこともあります。例えば、『ロワイヤル仏和中辞典』で temps を引くと、次のような例で部分冠詞が使われています。

  avoir du temps [libre] 「時間の余裕がある」
  gagner (perdre) du temps 「時間を稼ぐ(無駄にする)」

さて、この「temps」を中性代名詞に置き換えると、名詞だけが en に置き換わって動詞の直前に移動しますが、部分冠詞は消えるという規則があるので、du は消えているわけです。

なお、「pour la goûter」は「それを味わうために」というように副詞的に取ることもできますが、中性代名詞「en」に置き換わった「du temps (時間)」に形容詞的にかかるものとして、「それを味わうための時間」と解釈することもできます。

【逐語訳】
人生は短いが、それは人生が続く時間がわずかだからというよりも、むしろ、このわずかな時間の中で、人生を味わうための時間を私達はほとんどまったく持っていないからだ。

L'instant de la mort a beau être éloigné de celui de la naissance, la vie est toujours trop courte quand cet espace est mal rempli.

これは熟語 avoir beau + inf. : 「~しても無駄だ、いくら~しても」 の例文で詳しく取り上げましたので、そちらを参照してください。
















〔注〕 『小学館ロベール仏和大辞典』に記載されている形容詞「écoulé」の「〔時間が〕過ぎ去った」という意味の例文は、すべて付加的用法(直前の名詞に掛かる用法)ですが、ルソーの『エミール』と同年に出版された『アカデミーフランセーズ辞典』第 4 版(1762)で écouler を引くと、属詞的用法として、
  Le temps est écoulé.
という例文が「あらかじめ定められた期限が過ぎた(Le terme préfix est expiré)」という意味として載っています。













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