フランス語訳聖書 天地創造
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『創世記』第 1 章 1~8 節。旧約聖書の冒頭、天地創造の場面です。
(La Bible de Jérusalem 版を使用)。
Au commencement, Dieu créa le ciel et la terre. Or la terre était vide et vague, les ténèbres couvraient l'abîme et un souffle de Dieu agitait la surface des eaux.
Dieu dit : « Que la lumière soit » et la lumière fut. Dieu vit que la lumière était bonne, et Dieu sépara la lumière et les ténèbres. Dieu appela la lumière « jour » et les ténèbres « nuit.» Il y eut un soir et il y eut un matin : premier jour.
Dieu dit : « Qu'il y ait un firmament au milieu des eaux et qu'il sépare les eaux d'avec les eaux » et il en fut ainsi. Dieu fit le firmament, qui sépara les eaux qui sont sous le firmament d'avec les eaux qui sont au-dessus du firmament, et Dieu appela le firmament « ciel ». Il y eut un soir et il y eut un matin : deuxième jour.
Au commencement, Dieu créa le ciel et la terre.
「Au commencement」は「初めに」。
「Dieu (神)」は通常、大文字で無冠詞にします。
「créa」は他動詞 créer (作る、創造する)の単純過去。第 1 群規則動詞なので、単純過去は a 型の活用をします。
「ciel」は男性名詞で、「空、天」という意味。あとで出てくる「firmament (蒼穹、大空)」と区別するために、「天」としておきましょう。
「terre」は女性名詞で「大地、地面、土地」。
【フランス語からの逐語訳】
初めに、神は天と大地を造った。
Or la terre était vide et vague, les ténèbres couvraient l'abîme et un souffle de Dieu agitait la surface des eaux.
「Or」は接続詞で「さて、ところで」。英語の or (または)とは無関係です(また、男性名詞で「金」という意味にもなりますが、これもここでは無関係です)。
その後ろは、短い文が 3 つ積み重なっています(重文)。
la terre était vide et vague
「terre」は前の文で出てきた女性名詞「大地」。
「était」は être (~である)の直説法半過去(3人称単数)。
「vide (空っぽの、空虚な)」と「vague (漠然とした、曖昧な)」は、どちらも形容詞。もともと e で終わる単語なので、男女同形です。
ちなみに「vague」は女性名詞で「波」という意味もありますが、ここでは関係ありません。
「la terre était vide et vague」で「大地は空っぽで漠然としていた」となります。
les ténèbres couvraient l'abîme
女性名詞「ténèbres (暗闇)」は複数形でのみ使う単語です。
「couvraient」は他動詞 couvrir (覆う)の直説法半過去(3人称複数)。
「abîme」は男性名詞で「深み、深淵」。
「les ténèbres couvraient l'abîme」で「暗闇が深淵を覆っていた」となります。
et un souffle de Dieu agitait la surface des eaux
「et (そして)」の後ろの「soufle」は男性名詞で「(吐く)息、風」などの意味ですが、「息吹(いぶき)」という感じがぴったりです。「souffle de Dieu」で「神の息吹」となります。
「agitait」は他動詞 agiter (揺り動かす、掻き乱す)の直説法半過去(3人称単数)。『ロワイヤル仏和中辞典』でこの名詞の形 agitation を引くと、例文に
agitation de la mer (海荒れ、波立ち)
と載っているので、その動詞の形 agiter には海や水面を「荒れさせる、波立たせる」という意味があることがわかります。
「eaux」は女性名詞 eau (水)の複数形。
なぜ「水」が複数形なのかと思われるかもしれませんが、飲む対象となる場合は部分冠詞がつきますが、自然界に存在する海・湖・川・沼などについて言う場合は、しばしば複数形で使われます。
この文の動詞は、3 つとも半過去になっています。「était (...であった)」、「couvraient (覆っていた)」、「agitait (波立たせていた)」というように、いずれも過去の情景描写なので半過去を使っています。
【フランス語からの逐語訳】
ところで、大地は空っぽで漠然としており、暗闇が深淵を覆い、神の息吹が水の表面を波立たせていた。
Dieu dit : « Que la lumière soit » et la lumière fut.
「dit」は他動詞 dire (言う)の現在とまったく同じ形ですが、ここでは dire (言う)の単純過去(3人称単数)です。
他動詞 dire の直接目的(OD)は、ギユメの中全体(Que ...soit)です。
ギユメの中の文を見ると、まず「lumière」は女性名詞で「光」。
「soit」は être の接続法現在(3人称単数)。ここでは属詞になりうる言葉がないので、第 2 文型をとる繋合動詞(「~である」)ではなく、「ある、存在する」という意味です。
さて、文頭に Que がきて、動詞が接続法になっている場合は、おおむね 3 つの可能性がありますが、ここでは que の後ろの「la lumière」が主語(S)、「soit」が動詞(V)で、これだけで完結しているので、独立節です。
「...されんことを、...しますように」という願望・祈願の意味になることが多い表現ですが、ここはむしろ「3人称に対する命令」です。
普通の命令文は、目の前にいる 2 人称に対して(または目の前にいる私達に対して)命令するわけですが、この独立節では、目の前にないもの(ここでは「光」)に対して命令するわけです(「光」はまだこの時点では存在していないので、目の前にはありません)。
「et (そして)」の後ろを見ると、「fut」は être の単純過去(3人称単数)。ここも「ある、存在する」という意味です。
逐語訳すると「光があった」、「光が存在した」ですが、今までなかった(存在しなかった)ものがある(存在する)ようになった、ということなので、要するに「光ができた」、「光が作られた」ということになります。
【フランス語からの逐語訳】
神は言った、「光あれ」。そして光が存在するようになった。
Dieu vit que la lumière était bonne, et Dieu sépara la lumière et les ténèbres.
「vit」は、vivre (生きる)の現在と voir (見る)の単純過去が単数形でまったく同じ形になるので、文脈で判断するしかありませんが、ここでは他動詞 voir (見る)の単純過去(3人称単数)。
「vit (見た)」の直接目的は「que la lumière était bonne」全体です。
「見る」の他に、「見なす、考える」などいろいろな訳が可能ですが、文語訳では「観(み)たまへり」となっており、この感じに近いかもしれません。
「lumière (光)」の後ろの「était」は être の直説法半過去(3人称単数)。
ここは、過去の情景描写ではなく、時制の一致により、「過去における現在」なので半過去になっています。意味的には現在なので、「良かった」ではなく、「良い」というように「現在」らしく訳す必要があります。
「bonne」は形容詞 bon (良い)の女性単数の形。
séparer A et B (A と B を分離する)
という使い方をしています。
【フランス語からの逐語訳】
神は光が良いと見た、そして神は光と闇を分けた。
【文語訳】
神 光を善(よし)と観(み)たまへり 神 光と暗(やみ)を分(わか)ちたまへり
Dieu appela la lumière « jour » et les ténèbres « nuit.»
という使い方をする、「文法編」の「動詞の 6 分類」のうちの「直接他動詞(3)」のタイプの動詞です。第 6 文型をとり、A が直接目的、B が属詞になります。
ここでは A が「la lumière (光)」、 B が「jour (昼)」に相当します。
« » は「ギユメ」と呼ばれる引用符です。
「jour」は英語の day と同様に「日」という意味と「昼」という意味があり、男性名詞ですが、属詞なので無冠詞になっています。
「et (そして)」を挟んで、「les ténèbres (闇)」も上の A に相当し、「nuit (夜)」も B に相当します。
つまり、直接目的と属詞が 2 つずつ並列になっています。
「nuit」は女性名詞ですが、やはり属詞なので無冠詞になっています。
【フランス語からの逐語訳】
神は光を「昼」と呼び、闇を「夜」と呼んだ。
Il y eut un soir et il y eut un matin : premier jour.
「eut」は avoir の単純過去(3人称単数)。
つまり「Il y eut ~」は「Il y a ~ (~がある)」の単純過去の形です。
「soir (夕方)」と「matin (朝)」は、ともに男性名詞。
この文は「...matin」までで実質的に文が完結しています。
その後ろのドゥポワンは、同格・言い換えでよく用いられ、「つまり」「すなわち」と訳すとぴったりくる場合が多いと思いますが、特に訳さないほうが自然な場合もあります。
ここでは、下記「新共同訳」の感じに近いでしょう。
「premier」は形容詞で「最初の」。「jour」はここでは「日」の意味。
通常なら、「最初の日」つまり「 1 日目」というのは 1 つしかなく、特定されるので定冠詞がつく( le premier jour となる)はずですが、ここは同格なので無冠詞になっています。
【文語訳】
夕(ゆう)あり 朝ありき 是(これ)首(はじめ)の日なり
【新共同訳】
夕べがあり、朝があった。第一の日である。
【フランシスコ会訳】
そして夕べとなり朝となり、一日目が過ぎた。
Dieu dit : « Qu'il y ait un firmament au milieu des eaux et qu'il sépare les eaux d'avec les eaux » et il en fut ainsi.
「dit」はさきほども出てきましたが、 dire (言う)の単純過去(3人称単数)。
他動詞 dire の直接目的(OD)は、ギユメの中全体(Que ... eaux)です。
ギユメの中は、さきほど同様に「Que + 接続法」の独立節で、「3人称に対する命令」です。神が目の前にないものに対して命令しています。
ここでは、接続詞 et (そして)を挟んで、「Que + 接続法」が 2 回出てきます。
Qu'il y ait un firmament au milieu des eaux
「ait」は avoir (持つ)の接続法現在(3人称単数)。つまり、「il y ait」は「il y a (~がある、~が存在する)」の接続法現在の形です。
「firmament」は男性名詞で「天空、蒼穹(そうきゅう)」(文章語)。文語訳では「蒼穹(おおぞら)」、新共同訳では「大空(おおぞら)」と訳されています。
「milieu」は男性名詞で「真ん中」ですが、「au milieu de ~」で「~の真ん中で」という意味の前置詞句です。
「des」は de と les の縮約形。「eaux」はさきほども出てきましたが、自然界に存在する海・湖・川・沼などについて言う場合は、しばしば複数形で使われます。
ここを逐語訳すると、「水の真ん中に天空(大空)が存在するように。」となります。
qu'il sépare les eaux d'avec les eaux
「il」は「un firmament」を指します。
「sépare」は他動詞 séparer (分離する)の直説法現在(3人称単数)とまったく同じ形ですが、「que + 接続法」と取るべきなので、接続法現在(3人称単数)です。
「d'avec」は de と avec がくっついた形で、前置詞が 2 つ並んでいます(辞書で avec を引くと熟語欄などに出ています)。ここでは「de」は「~から」の意味〔英語の from 〕で、「avec」は「~と」。合わせて「~とから」ですが、単に「~から」でいいでしょう。離別を表します。 divorcer (離婚する)や séparer (分ける、分離する)などの動詞と一緒によく使われます。さきほど、
séparer A et B (A と B を分離する)
という使い方で出てきましたが、ほかに
séparer A de B (A を B から分離する)
という使い方もします。また、今出てきたように
という使い方もします。
「de」だけでも「d'avec」としても同じ意味ですが、もともと前置詞 de は英語の of の意味と from の意味があるので、from の意味であることを明確にしたい場合は「d'avec」を使います。
ここを逐語訳すると、「天空(大空)が水を水から分離するように。」となります。
et il en fut ainsi
「fut」は être の単純過去(3人称単数)。「et」の後ろを現在に直すと、「il en est ainsi」となります。
「il en est ainsi」は熟語です。辞書で ainsi を引くと熟語欄などに出ており、「そういう事情である」などと記載されています。
もともと、この「il en」は、「quoi qu'il en soit」の「il en」と同様、「il」は漠然と文脈全体を指し、「en」は「de + 前の文脈全体」に代わる中性代名詞で「それについては」という意味です。「ainsi」は「そのように」。
逐語訳すると、「(それは)それについてはそのようである」。つまり単に「そのようである」「そうである」と言っても同じです(各種の辞書に載っているような「事情」という言葉を入れなければならない必要性は特にありません)。
単純過去なので、直訳すると「そのようであった」「そうであった」ですが、文脈によっては「そのようになった」「そうなった」と訳すことができます。
【文語訳】
神言(いひ)たまひけるは水の中に蒼穹(おおぞら)ありて水と水とを分(わか)つべし (...) 即ち斯(かく)なりぬ
【新共同訳】
神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 (...) そのようになった。
【フランシスコ会訳】
次に、神は仰せになった、「水の中に大空あれ。そして水と水とを分けよ」。すると、そのとおりになった。
Dieu fit le firmament, qui sépara les eaux qui sont sous le firmament d'avec les eaux qui sont au-dessus du firmament, et Dieu appela le firmament « ciel ».
「fit」は faire (作る、する)の単純過去(3人称単数)。「firmament」は前の文で出てきた「蒼穹、大空」。
その次の関係代名詞「qui」の前にはコンマがあります。フランス語ではコンマの有無は厳密なものではなく、個人差がありますが、関係代名詞の前にコンマがあったら、後ろから前に(関係詞節を先行詞に)掛けて訳すのではなく、訳し下ろす(いったんコンマの前までを訳してから関係詞節の中を訳す)ようにすると、うまくいくことが多いといえます。ここの例で言うと、「神は大空を造った。そして大空は...」と訳すと、元のフランス語の感じに近くなります。
「sépara」は 2 つ前の文で出てきましたが、他動詞 séparer (分離する)の単純過去(3人称単数)。ここでは、
という使い方をしています。 A が「les eaux qui sont sous le firmament (大空の下にある水)」、B が「les eaux qui sont au-dessus du firmament (大空の上にある水)」に相当します。
「eaux」は女性名詞 eau (水)の複数形。
「sous」は前置詞で「~の下に」。「au-dessus de」は前置詞句で「~の上に」。辞書で「au-dessus」を引くと、熟語欄に記載されています。
前置詞 sur も「~の上に」ですが、「au-dessus de」は「接しておらず、離れて上方にある」ときに使います〔英語の over, above に相当〕。
接続詞「et (そして)」の後ろの「appela」は appeler (呼ぶ)の単純過去。さきほどと同様、「appeler A B (A を B と呼ぶ)」という使い方をしています。 A が「le firmament」、 Bが「ciel」です。
「ciel」は男性名詞で「空、天」という意味ですが、「firmament (蒼穹、大空)」と区別するために、「天」としておきましょう。
【文語訳】
神 蒼穹(おおぞら)を作りて蒼穹の下の水と蒼穹の上の水とを判(わか)ちたまへり(...) 神 蒼穹(おおぞら)を天と名づけたまへり
【新共同訳】
神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。(...) 神は大空を天と呼ばれた。
【フランシスコ会訳】
神は大空を造り、その下の水と上の水とを分けられた。神は大空を「天」と名づけられた。
【フランス語からの逐語訳】
神は大空を造った。そして大空は大空の下にある水を、大空の上にある水から分離した。そして神は大空を「天」と呼んだ。
Il y eut un soir et il y eut un matin : deuxième jour.
さきほどの 1 日目の終わりの文とほぼ同じです。
「deuxième」は「2 番目の」。
【文語訳】
夕(ゆう)あり 朝ありき 是(これ)二日(ふつか)なり
【新共同訳】
夕べがあり、朝があった。第二の日である。
【フランシスコ会訳】
そして夕べとなり朝となり、二日目が過ぎた。
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