「北鎌フランス語講座 - 文法編」と連動し、短い例文を使って徹底的に文法を説明し、構文把握力・読解力の向上を目指します。

フランス語訳聖書 ペトロの否認

ペトロの否認      ⇒ 「聖書」のトップに戻る

『マルコによる福音書』(La Bible de Jérusalem 版)からの抜粋です。

  • ペトロの否認の予告 (Prédiction du reniement de Pierre) (第 14 章 29~31 節)
    (いわゆる「最後の晩餐」の直後、イエスがペトロの否認を予言する場面)

  Pierre lui dit : « Même si tous succombent, du moins pas moi ! » Jésus lui dit : « En vérité, je te le dis : toi, aujourd'hui, cette nuit même, avant que le coq chante deux fois, tu m'auras renié trois fois. » Mais lui reprenait de plus belle : « Dussé-je mourir avec toi, non, je ne te renierai pas. » Et tous disaient de même.

  • ペトロの否認 (Reniements de Pierre) (同 66~72 節)
    (イエスが囚われたのち、保身のためペトロがイエスのことを「知らない」と嘘をつく場面)

  Comme Pierre était en bas dans la cour, arrive une des servantes du Grand Prêtre.
Voyant Pierre qui se chauffait, elle le dévisagea et dit : « Toi aussi, tu étais avec le Nazarénien Jésus. » Mais lui nia en disant : « Je ne sais pas, je ne comprends pas ce que tu dis. » Puis il se retira dehors vers le vestibule et un coq chanta. La servante, l'ayant vu, recommença à dire aux assistants : « Celui-là en est ! » Mais de nouveau il niait. Peu après, à leur tour, les assistants disaient à Pierre : « Vraiment tu en es ; et d'ailleurs tu es Galiléen. » Mais il se mit à jurer avec force imprécations : « Je ne connais pas cet homme dont vous parlez. » Et aussitôt, pour la seconde fois, un coq chanta. Et Pierre se ressouvint de la parole que Jésus lui avait dite : « Avant que le coq chante deux fois, tu m'auras renié trois fois. » Et il éclata en sanglots.

Pierre lui dit : « Même si tous succombent, du moins pas moi ! »

 Pierre lui dit

「Pierre」はイエスの弟子。文語訳では「ペテロ」ですが、新共同訳とフランシスコ会訳では「ペトロ」となっているので、「ペトロ」としておきます。
「lui (彼に)」の「彼」は Jésus (イエス)を指します。

「dit」は他動詞 dire (言う)の単純過去(3人称単数)
dire の直説法現在と単純過去は、単数形(je dis, tu dis, il dit)が完全に同じ形になるため、どちらの時制なのかは、文脈で判断するしかありません。ここは単純過去です。
dire (言う)は他動詞で、その直接目的は、次のせりふ(ギユメの中)全体です。

 Même si tous succombent, du moins pas moi !

「Même si...」は英語の even if... と同じ意味の熟語で、「たとえ ...であっても」。「même」は「たとえ」という「強調」の意味の副詞です。
même si... の後ろの動詞は、「非現実の仮定」であれば条件法にし、そうでなければ直説法にします。ここでは、「非現実の仮定」というほどではないため、「succombent」(後述)は直説法になっています。

「tous」は前後に名詞がないので、形容詞(「すべての」)ではなく、代名詞化していることがわかります。 tous は代名詞化すると「皆、全員」という意味になり、形容詞と区別するために語尾の s も発音して「トゥース」と発音します

「succombent」は規則動詞 succomber の現在(3人称複数)。
succomber は、仏仏辞典によると 「重荷に押しつぶされること(être accablé sous un fardeau)」を意味し、仏和辞典には「負ける・降伏する」「(誘惑に)屈する」と記載されていますが、日本語訳の聖書では「つまづく」と訳されているので、この訳に従います。

「du moins」は熟語で「少なくとも」〔英語の at least〕。
「moi」は強勢形で「私」。
「pas」は否定の ne... pas の pas ですが、辞書で pas を引くと、最後のほうに「対立」という項目があり、強勢形と一緒に使った例文が載っているはずです。
「pas moi」で「私は違う」となります。

「pas moi ! 」の部分は、次のように言い換えることができます。

  je ne succomberai pas ! (私はつまづきません)

「succomberai」は succomber の直説法単純未来(第 1 群規則動詞なので、je なら語尾 -er を -erai にすれば直説法単純未来になります)。
ここでは単純未来は「意志」を表します。

【ここまでの訳】
ペトロは彼に言った、「たとえ皆がつまづいたとしても、少なくとも私はつまづきません」。

Jésus lui dit : « En vérité, je te le dis : toi, aujourd'hui, cette nuit même, avant que le coq chante deux fois, tu m'auras renié trois fois. »

 Jésus lui dit

「Jésus lui dit」は「イエスは彼に言った」。
「dit」は前の文と同様、他動詞 dire (言う)の単純過去(3人称単数)
間接目的「lui (彼に)」は、「ペトロに」です。

 En vérité, je te le dis

「vérité」は女性名詞で「真実」。「en vérité」は「本当に」という意味の熟語。熟語なので無冠詞になっています。
「te (あなたに)」はもちろん目の前にいるペトロに向かって言っています。一般に、現代のフランス語訳聖書では、イエスと弟子は相互に tu で呼び、また神と人間も相互に tu で呼んでいます。語学的には tu や toi は適当にその場の状況に合わせて訳せばよく、弟子なら「おまえ」と訳してもよさそうなものですが、日本語訳聖書ではみな「あなた」となっているので、一応それに従っておきます。
次の「le」は、フランス語には全部で 3 種類の le があり、「どこに置くか」・「何を指すか」で区別可能です。ここでは「dis」という他動詞 dire (言う)前に置かれていて、なおかつ、前に出てきた単数の男性名詞 1 語と取ることはできないため、「文脈全体を指す中性代名詞」ということになります。ここでは、コロンの後ろから文末まで(toi, aujourd'hui... trois fois)を指します。
「dis」は dire の単純過去(1人称単数)と同じ形ですが、ここでは文脈から(今、現に言っているので) dire の現在(1人称単数)と取ります。
この「En vérité, je te le dis」は、聖書(福音書)でよく出てくる表現で、文語訳では「まことに汝に告ぐ」、新共同訳では「はっきり言っておくが」、フランシスコ会訳では「あなたによく言っておく」と訳されています。

 toi, aujourd'hui, cette nuit même, avant que le coq chante deux fois

「toi」は強勢形で、対比・強調しています。この場面では、いわゆる「最後の晩餐」を終えた直後、イエスが 12 人の弟子とともにいると思われるので、他の 11 人と対比させて、「あなたは」と言っているわけです。
「aujourd'hui」は「今日」。
「cette nuit (今夜)」は指示形容詞 ce (この)の女性形「cette」に女性名詞「nuit (夜)」がついたものですが、副詞的に働いています
「même」は強調したい言葉〔=名詞または副詞〕の直後に置いて、「まさに~」「~そのもの」という意味。「cette nuit même」で「まさに今夜」となります。

接続詞句「avant que... (...する前に)」の後ろは接続法になるため、ここも動詞「chante (歌う)」は接続法現在(3人称単数)になっています。ただし、接続法現在は第 1 群動詞の場合は 1 ~ 3 人称単数と 3 人称複数が直説法現在とまったく同じ形になるため、形の上では直説法現在と見分けがつきませんが、「avant que...」の後ろなので接続法現在ということになります。
「coq」は「鶏」。「chante」の不定形 chanter は自動詞で「歌う」「(鳥が)鳴く」という意味。
「deux fois」は「2回」。女性名詞「fois (回)」はもともと s で終わる言葉です。
s を取ってしまうと、「foi (信仰)」という、まったく別の単語になります。

 tu m'auras renié trois fois

「auras」は助動詞 avoir の単純未来(2人称単数)。「renié」は他動詞 renier (否認する)の過去分詞。
「auras renié」は「avoir の単純未来+renier の過去分詞」なので、合わせて「renier の前未来」になっています。
前未来は、未来のある時までには終えていることを表す、英語の未来完了に相当する時制です。「鶏が 2 回鳴くまでに、あなたは 3 回私のことを否認しているだろう」と言っているわけです。まさに前未来のお手本ともいうべき文です。

ちなみに、renier の名詞の形は reniement (否認)で、聖書のこの場面は一般に「le reniement de saint Pierre (聖ペトロの否認)」と呼ばれます。
ただし正確には、まだ否認を予言している段階なので、Jérusalem 訳では

  Prédiction du reniement de Pierre (ペトロの否認の予告)

という題がついています。「prédiction」は文字通りには「予言」という意味で、動詞の形は prédire (予言する)。これは pré (「予め」を意味する接頭語)と dire (言う)が合わさった単語です。
また、実際に否認する時は 3 回否認するので、複数形で

  Reniements de Pierre (ペトロの否認)

と題されています。

なお、 renier (否認する)から接頭語 re- を省いた nier は「否定する」という他動詞で、より広く一般的に使われます。この名詞の形は la négation (否定)です。

【ここまでの訳】
イエスは彼に言った、「本当に私はあなたに言う、あなたは今日、まさに今夜、鶏が 2 回鳴く前に、私のことを 3 回否認しているだろう」。

Mais lui reprenait de plus belle : « Dussé-je mourir avec toi, non, je ne te renierai pas. »

 Mais lui reprenait de plus belle

「Mais (しかし)」は接続詞。「lui (彼)」は間接目的ではありませんので注意してください。これを間接目的と取ると、主語が無くなってしまいます。この「lui」は強勢形で、ペトロを指し、強勢形がそのまま主語になっています
強調ではない普通の言い方にすると、 lui の代わりに il を使って、次のようになります。

  Mais il reprenait de plus belle

「reprenait」は直説法半過去の語尾 -ait で終わっています。 reprendre の直説法半過去です。 re- は「再び」という意味の接頭語、 prendre は「つかむ、取る」〔英語 take〕なので、「再び取る」が元の意味ですが、ここでは「再び言う、繰り返す」という意味。
半過去は「過去の状況説明・情景描写」で使うので、ここも単に「再び言った」というよりも、「言う」という行為を情景として描写しており、「再び言うのであった」という感じになります。

「belle」は beau の女性単数の形ですが、この近くに女性単数の名詞は存在せず、女性単数になっていることの説明がつきません。
このように、「文法的におかしいな」と感じたら、熟語である可能性が高いといえます。
辞書で beau を引くと、熟語欄に、

  de plus belle (前よりも)いっそう強く(激しく)

と載っています。

 Dussé-je mourir avec toi

「mourir」は自動詞で「死ぬ」。「avec」は前置詞で「~と一緒に」。「toi」は強勢形。前置詞の後ろなので強勢形になっています。

「Dussé-je」は、辞書の devoir (~しなければならない)を引くと、熟語欄に(または項目内の例文として)、「たとえ私が~しても」という意味で載っています。
しかし、なぜこのような意味になるでしょうか。

まず、形から見ておくと、「dussé」は devoir の接続法半過去で、通常は dusse という形になりますが、倒置になった場合は語末の e にアクサン・テギュがついて dussé-je という形になります

さて、なぜここで接続法半過去が使われているかというと、もともとこのペトロの言葉は、一番一般的な言い方にすると、次のようになります。

  Si je devais mourir avec toi
    (もし私があなたと一緒に死ななければならなかったとしても)

「devais」は devoir の直説法半過去。「Si + 直説法半過去」で「現在の事実に反する仮定(もし仮に~だったとしたら)」です。

そして、ここからは「高度な条件法の用法」のページに出てくる難しい話になりますが、
非現実の仮定に「譲歩」の意味が追加される場合(「もし仮に~だったとしても」)は、
  si を省いて時制を条件法にし、主語と動詞を倒置にする
ことも可能
なため(条件法による条件節)、次のように言い換えることができます。

  Devrais-je mourir avec toi

「devrais」は devoir の条件法現在です。

さらに、条件法現在の代わりに、「条件法現在第二形」(条件法現在の第二の形、つまり別の形)として、接続法半過去を使うことも可能なため、このペトロの言葉、

  Dussé-je mourir avec toi

になるわけです。
ただし、この「条件法現在第二形」は、現代では熟語表現(fût-il, fût-ce など)以外では、ほとんど用いられません
だから、辞書にも「Dussé-je」は「熟語」として載っているわけです。

 non, je ne te renierai pas

この「non (いいえ)」は、なくても文は成り立ちます。通常は不要な言葉ですが、ここでは否定を強く打ち出すために入れています。
「renierai」は第 1 群規則動詞 renier (否認する)の直説法単純未来
ちなみに、末尾に s がついて「renierais」だと条件法現在になりますので、注意してください。 s がなければ単純未来、 s があれば条件法現在です

上で見たように、ペトロの言葉の前半は「Si je devais mourir」と同じ意味ですが、通常は「Si + 直説法半過去」を使ったら、主節は「条件法現在」になるのが定式表現です。つまり、通常なら条件法現在「renierais」を使って、次のように言うはずです(「non」は省いておきます)。

  Si je devais mourir avec toi, je ne te renierais pas.
    (もし私があなたと一緒に死ななければならなかったとしても、私はあなたを
    否認しないだろう)

しかし、実際のペトロの言葉では単純未来「renierai」を使っています。
この単純未来は「~するつもりです」という「意思」を表します〔英語の I will not 〕。
あえて「非現実の仮定」を表す条件法を使わずに、あたかも非現実ではなく現実に、実際に否認などしない、と言わんばかりに直説法を使ったところに、ペトロの断固たる意思が感じられます。「否認しないだろう」ではなく、「否認するつもりはありません」「否認しません」という感じになります。

【ここまでの訳】
しかし彼はいっそう激しく再び言うのであった、「もし私があなたと一緒に死ななければならなかったとしても、私はあなたを否認しません」。

Et tous disaient de même.

「Et」は接続詞で「そして」。
「tous」は形容詞ではなく代名詞で「皆」という意味。最後の s も発音します

「disaient」は dire (言う)の直説法半過去(3人称複数)。
さきほどの「Mais lui reprenait de plus belle」と同様、この半過去は「言うのであった」という感じです。
「de même」は「同様に」という意味の熟語
弟子達が皆、「私もあなたを否認しません」と、口々に言ったのでしょう。

【ここまでの訳】
そして皆、同様に言うのであった。



この後、イエスはユダの裏切りによって囚われ、大祭司の屋敷に連れて行かれ、裁判を受ける。
ペトロも遠くからイエスの後を追いかけ、大祭司の屋敷の中庭に入り込み、下役たちと一緒に座って、(寒かったので)火に当たって暖を取っていた。




Comme Pierre était en bas dans la cour, arrive une des servantes du Grand Prêtre. 

 Comme Pierre était en bas dans la cour

「Comme」は「...とき」「...ので」などの意味の従属接続詞で、英語の as に相当します。
「...とき」といっても quand 〔英語 when 〕ほど単純に「時」ではなく、また「...ので」といっても parce que 〔英語 because 〕ほど単純に「理由」ではなく、どちらとも取れる場合もあり、あまり意味を明確に指定せずに、従属節と主節を緩やかに結びつける言葉です。ここでは「...(している)と、」という感じです。文頭からコンマまでが従属節です。
「était」は être の直説法半過去(3人称単数)。

「en bas」は熟語で「下に、下のほうに」。ここでは、屋敷の建物内(床の上)ではなく、下の地べたという意味でしょう。あるいは、大祭司のいる場所が上座だとすると、そこから遠い下座のほう、という意味でしょう。漠然とした言葉です。
「cour」は女性名詞で「庭・中庭、宮廷、裁判所」という意味〔英語 court 〕。ちなみに、発音が同じ「cours」は男性名詞で「流れ、講義」という意味〔英語 course 〕。

「en bas」と「dans la cour」は、どちらも場所を表す状況補語ですが、まず大雑把に「en bas (下のほうに)」と言ってから、もう少し具体的に「dans la cour (中庭に)」と言っているわけです。こうした場合、「en bas」と「dans la cour」間にコンマを打つこともありますが、もともとコンマの有無は厳密なものではなく、個人差があります

 arrive une des servantes du Grand Prêtre

「arrive」は自動詞 arriver (到着する)の現在(3人称単数)。
「servante」は「下女、女中」。新共同訳では「女中」、フランシスコ会訳では「召使の女」となっています。もともと servir (仕える)の現在分詞 servant が名詞化した言葉なので「仕える人」という意味で、その女性形です。ここでは「召使の女」という訳を拝借します。
「des」は前置詞 de と定冠詞 les の縮約形なので、「une des servantes」は英語に逐語訳すると one of the servants となります。次の「du」も de と le の縮約形。

「Grand Prêtre」は大文字なので、いわば固有名詞のような扱いになっています。もともと、「grand」は形容詞で「大きな、偉大な」。名詞の前に置くと「偉大な」の意味になります。「prêtre」は(カトリックの)「司祭」または(他の宗教の)「神官、僧侶、祭司」。そのため、小文字で書くと「偉大な司祭」と取られかねないので、このように大文字で書くことで、ユダヤ教の「大祭司」の意味であることを明確にしようとしているわけです( p は小文字にして「Grand prêtre」と書くこともあります)。

さて、自動詞「arrive」の主語は何でしょうか。
主語は、「une des servantes du Grand Prêtre (大祭司の召使の女の一人)」としか取れません。つまり、ここは倒置になっています。
これは、動詞に比べて主語が長い場合は、倒置になりやすいからです。

「arrive」は時制が現在形になっています。この文の前半では時制が「était」と半過去になっており、また後続の文では、基本的に単純過去が使われているのに、この「arrive」だけ現在です。
これは、いわゆる「歴史的現在」と呼ばれるものです。「歴史的現在」の使い方は英語と同じで、過去の出来事を表すのに、あえて現在形を使うことで、あたかも目の前で今、出来事が繰り広げられているような感じを与えます。
同時に、読者の注意を惹きつける効果もあります。ここで「歴史的現在」を使うことは、物語の新たな展開を予感させます。実際、「召使の女」の登場は、ペトロの否認の引き金となる重要な意味を持っています。

【ここまでの訳】
ペトロが下のほう、中庭にいると、大祭司の召使の女の一人がやって来る。

Voyant Pierre qui se chauffait, elle le dévisagea et dit : « Toi aussi, tu étais avec le Nazarénien Jésus. »

 Voyant Pierre qui se chauffait, elle le dévisagea et dit

「Voyant」は他動詞 voir (見る)の現在分詞。
現在分詞で始まっていて、後ろにコンマがあるので、慣れてくると、分詞構文だな、という勘が働くようになります。
「chauffait」は他動詞 chauffer (暖める)の直説法半過去(3人称単数)。
この他動詞の直接目的が再帰代名詞「se」なので、「se」は「自分を」という意味になり、「自分を暖める」→「暖まる」となります(自動詞的な意味に変化します)。ここでは、(焚き火に当たって)暖を取る、ということです。

これが関係代名詞「qui」を介して、前の先行詞「Pierre」に掛かっているので、「Pierre qui se chauffait」で「暖まっていた(暖を取っていた)ペトロ」となります。
分詞構文の意味は「単純接続」に近く、「暖を取っていたペトロを見て、」となります。

「elle」は前の文に出てきた「une des servantes (召使の女の一人)」を指します。
「dévisagea」は他動詞 dévisager (じっと見つめる)の単純過去(3人称単数)。
dévisager は manger (食べる)と同じ活用をする不規則動詞で、語尾 a, o の前では e が余計に入ります。ここも、単純過去( a 型)の3人称単数の語尾 a の前に e が余計に入っています。
もともと le visage (顔)という男性名詞からできた動詞です。似たような動詞に、envisager (直視する、検討する、考える)があります。
「dit」は他動詞 dire (言う)の単純過去(3人称単数)
ここまでで、「暖を取っていたペトロを見て、彼女は彼をじっと見つめ、言った」となります。

 Toi aussi, tu étais avec le Nazarénien Jésus.

「Toi aussi」は「強勢形 + aussi」というよく使う表現で、「あなたもまた」〔英語 you too〕。「あなた」というより、ここでは「tu」は「あんた」という感じかもしれません。
「étais」は être の直説法半過去。「avec」は前置詞で「~と一緒に」。

「Nazarénien」は「ナザレの」という意味の形容詞 nazarénien が大文字になった形です。ナザレ(Nazareth)はイスラエル北部ガリラヤ地方の町。国名や都市名・地方名を表す形容詞が大文字になると、「~(地方の)人」という意味になります。ここは「ナザレの人」ですが、日本語訳聖書ではよく「~人(びと)」と読ませて「~(地方)の人」という意味で使うので、ここも「ナザレ人(びと)」としておきましょう。

なお、この箇所を「de Nazareth (ナザレの)」と訳しているフランス語訳聖書もあります。このほか、Nazaréen や Nazôréen という言い方もしますが、もとのギリシア語の語尾の違いと訳し方の相違によるものです。詳しくは «Jésus : de Nazareth, le Nazôréen, le Nazaréen ? » などで解説されています。

【ここまでの訳】
暖を取っていたペトロを見て、彼女は彼をじっと見つめ、言った。「あんたも、ナザレ人イエスと一緒にいたね」。

Mais lui nia en disant : « Je ne sais pas, je ne comprends pas ce que tu dis. »

 Mais lui nia en disant

「Mais (しかし)」の後ろの「lui」は、さきほどと同様、強勢形がそのまま主語になる用法です。
「nia」は他動詞 nier (否定する)の単純過去(3人称単数)。
「disant」は dire (言う)の現在分詞なので、その前の en は「3 種類の en」のうちの「ジェロンディフ」を作る en です。
ここだけを訳すと、「しかし彼は、...と言いながら否定した」、または「しかし彼は、次のように言いながら否定した」となります。

 Je ne sais pas, je ne comprends pas ce que tu dis.

「sais」は savoir (知っている)の現在(1人称単数)。「Je ne sais pas」は英語の I don't know と同じです。
「comprends」は接頭語 com を省くと「prends」となり、これは prendre (取る・得る [英語 take] )の現在 1人称単数の形です。もともと、「com」は「一緒に」という意味の接頭語 (辞書で com を引けば載っています)。つまり comprendre は「一緒に取る」というイメージから、「理解する」という意味になります。
「dis」はここでは dire (言う)の現在(2人称単数)。
「je ne comprends pas ce que tu dis」を英語に逐語訳すると、次のようになります。

  I don't understand what you say.

「ce que」は英語の what に相当しますが、詳しくいうと 2 通りの解釈が可能です。
一つは、「ce」が先行詞、「que」が関係代名詞だとする解釈。ce は先行詞になると「...なもの」「...なこと」という意味なので、関係代名詞らしく訳すと、

  「私はあなたが言っていることがわからない」

となります。
もう一つは、「ce que」は間接疑問で、直接目的の「物」を指す「何を」という意味だとする解釈。そうすると、

  「私はあなたが何を言っているのかわからない」

となります。
英語の I don't understand what you say も、この両方に解釈可能です。

内容的には、これがペトロ 1 回目の否認です。

【ここまでの訳】 しかし彼は、「私は知らない。私はあなたが何を言っているのかわからない」と言って否定した。

Puis il se retira dehors vers le vestibule et un coq chanta.

 Puis il se retira dehors vers le vestibule

「Puis」は「ついで」。
ちなみに、この puis と発音が同じ単語としては、次のものがあります(互いにまったく無関係)。

  男性名詞「puits (井戸)」
  pouvoir の 1 人称単数「puis」(硬い文で peux の代わりに使用) 〔綴りも同じ〕

「il」はもちろんペトロを指します。
「retira」から「再び」を意味する接頭語 re を省いた「tira」は、他動詞 tirer (引く)の単純過去(3人称単数)。第 1 群規則動詞なので、単純過去は a 型の活用になります。
retirer は他動詞で「再び+引く」が元の意味ですが、実際には「引き出す、取り去る、引っ込める」などの意味で使います。
この直接目的が再帰代名詞の「se」なので、「自分を引っ込める」というような感じから、「身を引く、引き下がる、退出する」という意味になります。
「dehors」は副詞で「外へ」。

「vers」は前置詞で「~のほうへ」。ちなみに、この「vers」と発音が同じ単語としては、次のものがあります(互いにまったく無関係)。

  男性名詞「ver (虫)」
  男性名詞「vers (詩)」 〔綴りも同じ〕
  形容詞「vert (緑の)」

さて、少し問題なのは「vestibule」です。これは男性名詞で、普通は「玄関」の意味です。
仏和辞典を引くと、「玄関、玄関の広間」、「(教会の)拝廊」、「〔解剖学用語で〕前庭(ぜんてい)」などの意味が出ています。
日本語訳の聖書では、この箇所は文語訳では「庭口」、新共同訳では「出口」、フランシスコ会訳では「前庭(まえにわ)」となっていて、かなりばらつきがあります。
仏仏辞典で vestibule を調べると、「建物の入口の部屋で、他の部分や他の部屋に通じるところ」(リトレ)とか、「入ってきた人々を最初に迎え、他の部屋に通じる部分としての役割を果たす、建物の部屋」(アカデミー・フランセーズ第 8 版)などと説明されています。
ただ、これが具体的に何を指すのかは、厳密には元のギリシア語に当たる必要があり、また建物の造りが現代とは異なる以上、古代ユダヤの建築や考古学の知識も必要でしょう。ちょっと本ホームページの範囲を超えてしまいますので、とりあえずフランス語に沿って「玄関」としておきます(恐らく、屋敷の門ないし入口のほうを指すのかもしれません)。

ここは、一旦漠然と「dehors (外へ)」と言ってから、もう少し具体的に「vers le vestibule (玄関のほうへ)」と言い直しています。

 et un coq chanta

「et (そして)」の後ろの「coq」は「鶏」。
「chanta」は自動詞 chanter (〔人が〕歌う、〔鳥が〕鳴く)の単純過去(3人称単数)。
もともと単純過去は、今の状態とは無関係に、単純に過去の出来事を述べるときに使います。
鶏が鳴くというのは重要な象徴的意味があるのに、大袈裟な修飾語を用いて書き立てることなく、ぽつりと単純過去でそっけなく書かれているところが、何とも心にくいところです。

【ここまでの訳】 ついで彼は外へ、玄関のほうへ引き下がり、鶏が鳴いた。

La servante, l'ayant vu, recommença à dire aux assistants :
« Celui-là en est ! »

 La servante, l'ayant vu, recommença à dire aux assistants

2 つのコンマに挟まれた部分は、先頭に -ant という現在分詞の語尾を持つ単語がきているので、現在分詞を使った分詞構文だと見当がつきます。
「La servante」は定冠詞がついているので、さきほど出てきた「召使の女」を指します。
「ayant」は助動詞 avoir の現在分詞。「vu」は voir (見る)の過去分詞
この分詞構文の部分のベースには、次の文があります。

  La servante l'a vu. (召使の女は彼を見た)

「a vu」で avoir + p.p. なので複合過去です。この助動詞「a」の部分が現在分詞 ayant になったわけです。
「l' (彼を)」は、もちろんペトロを指します。
分詞構文の意味は、「単純接続」または「時」で、「彼を見ると、」という感じです。

「recommença」は「再び」を表す接頭語 re を省くと「commença」となり、これは commencer の単純過去(3人称単数)です。 à の後ろに不定詞(inf.)がきて、

  commencer à + inf. 「~し始める」
  recommencer à + inf. 「再び~し始める」

という使い方をします。

「aux」は à と les の縮約形
「assistant」は「助手(アシスタント)」の意味もありますが、複数形だと「その場に居合わせる人々、列席者」という意味になります。
これは、動詞 assister は「補佐する」という意味のほかに、assister à ~ で「~に立ち会う」という意味があるからです(むしろこちらのほうがよく使います)。
その現在分詞 assistant (補佐する、立ち会う)から派生した名詞です。

動詞名詞
間接他動詞assister à ~ ~に立ち会うpl. その場に居合わせる人々
直接他動詞assister 補佐する・助ける助手(アシスタント)

ちなみに文語訳では「傍らに立つ者ども」、新共同訳では「周りの人々」、フランシスコ会訳では「傍らに立っている人々」と訳されています。

 Celui-là en est !

「Celui」は、普通は前に出てきたものを指す言葉で、「-là」がつくと比較的遠くのものを指しますが、ここでは辞書で celui を引くと、後ろのほうの項目に「celui-là」で「その人、そちらの人」という意味が載っています。
召使の女が、少し距離のあるところからペトロを指差して言っている感じがします。

「est」は être の現在(3人称単数)。
「en」は、フランス語で 3 種類ある en のうち、動詞の直前にあるので中性代名詞の en です。「de + 物」に代わる en ですが、ここでは、なぜ「de」が出てきたのか、そして「物」が何を指すのかが、分析的に理解することが困難です。
実は、これは熟語表現で、辞書で être を引くと、後ろのほうに en と一緒に使う用法として、en être で「仲間である、お仲間だ(同性愛者だ)、その筋の者だ(警察の回し者だ)」(辞書によって訳は色々)などの意味が載っています(話し言葉ですが、昔から使われている、いわば由緒ある表現です)。
あえて説明しようとすると、前置詞 de は「所属」の意味で、「être de ~」で「~のものである、~に属する者である」という意味になり、この「de ~」が en に置き換わったといえるでしょう。しかし、もう熟語化しています。

【ここまでの訳】
召使の女は彼を見かけると、その場に居合わせた人々に再び言い始めた、「その人も仲間だよ」。

Mais de nouveau il niait.

「Mais」は接続詞で「しかし」。
その後ろの「de nouveau」は、よく使われる熟語で「再び」。「nouveau」は「新しい」という意味の形容詞なので、「新たに」「あらためて」というニュアンスです。
これを熟語と取らずに文法的に説明するのは困難です。逆に言うと、文法的に変だと思ったら、熟語ではないかと疑ってみる必要があります。

「il」はペトロを指します。
「niait」は nier (否定する)の直説法半過去。「ペトロの否認の予告」で出てきた「Mais lui reprenait...」と同様、この半過去は「~するのであった」という感じです。

nier は他動詞なのに直接目的語がありません。いわゆる「他動詞の絶対的用法」です。
恐らく 1 回目の否認の時の「私は知らない。私はあなたが何を言っているのかわからない」とほとんど同じことを言ったのでしょう。改めて書かなくてもわかるので、直接目的に相当するせりふを省略したのだと思われます。

これがペトロ 2 回目の否認です。

【ここまでの訳】
しかし再び彼は否定するのであった。

Peu après, à leur tour, les assistants disaient à Pierre :
« Vraiment tu en es ; et d'ailleurs tu es Galiléen. »

 Peu après, à leur tour, les assistants disaient à Pierre

「Peu」は「ほんの少し」または「ほとんど... ない」。英語の few, little と同じ意味ですが、peu には英語のような可算名詞/不可算名詞の区別はありません。不定冠詞 un をつけると、un peu で「少し」となります(英語の a few, a little と同様)。

「après ~ (~の後で)」は前置詞なので、基本的には直後に名詞がきます。例えば

  après le départ (出発の後で)

というように使いますが、après の前に時間を表す言葉を置くと、「~の〔時間〕後に」となります。例えば、

  dix minutes après le départ (出発の 10 分後に)

「dix」は数詞の「10」、「minute」は「分」です。
この場合、après の後ろのものを言わなくてもわかる場合は省略して、

  dix minutes après, (10 分後に、)

と言うこともよくあります。
ここでは、この「dix minutes」の代わりに「peu」が使われているわけです。「Peu après」で「ほんの少し後で」「ほとんど間を置かずに」という、よく使う表現です。

「à leur tour」はコンマで挟まれているのでわかるように、挿入句的に使われています。「tour」は「回転、一周、(回ってくるから)順番」などの意味があり、ここでは「順番」。
逐語訳すると「彼らの順番で」という感じですが、熟語化しており、「今度は」という意味。辞書の熟語欄では(つまり文脈から切り離して言う場合には)、所有形容詞son 〔英語 its〕で代表させるので、leur を son に直した、

  à son tour 「今度は」

という形で載っています(ただし、「順番」の意味の例文に載せている辞書もあります)。

「assistants」はさきほど出てきた「その場に居合わせた人々」。「disaient」は dire (言う)の直説法半過去(3人称複数)。

ここまでで、「ほんの少し後で、今度は、その場に居合わせた人々がペトロに言うのだった」となります。

 Vraiment tu en es ; et d'ailleurs tu es Galiléen.

「Vraiment」は副詞で「本当に」。
「es」は être の現在(2人称単数)。ここも、さきほど出てきた熟語 en être (仲間である) が使われています。
「d'ailleurs」は辞書の ailleurs を引くと熟語欄に載っている、「それに」「そもそも」という意味の基礎的な熟語。
「Galiléen」は、さきほど出てきたガリラヤ地方を意味する Galilée の形容詞 galiléen (ガリラヤの)に由来し、国名や地方名の形容詞が大文字になると「~人」という意味になるため、「ガリラヤ人(びと)」という意味。
第2文型属詞になっているので無冠詞になっています。「tu es Galiléen」で「おまえはガリラヤ人だ」となります。
ちなみに galiléen に相当するイタリア語 galileo は、ガリレオ・ガリレイの「ガリレオ」と同じ綴りです。

【ここまでの訳】
ほんの少し後で、今度は、その場に居合わせた人々がペトロに言うのだった、「本当におまえは仲間だ。それに、おまえはガリラヤ人じゃないか」

こうして、その場に居合わせた人々からの厳しい視線にさらされたペトロは、心理的に追い詰められ、次のせりふを吐きます。

Mais il se mit à jurer avec force imprécations : « Je ne connais pas cet homme dont vous parlez. »

 Mais il se mit à jurer avec force imprécations

「Mais (しかし)」の後ろの「il」はペトロを指します。
「mit」は mettre の単純過去(3人称単数)。
mettre は他動詞で「置く」というのが一番大きな意味ですが、ここでは

  se mettre à + inf. (~し始める)

という熟語で、commencer à + inf. と同じ意味です。

さて、「jurer」は辞書を引くと自動詞と他動詞の両方が載っていますが、ここではどちらでしょうか。
ここまで何度か、このページではコロンの後ろにギユメ( « » )がつく文が出てきましたが、文法的にはギユメの中全体がほぼすべて他動詞 dire (言う)の直接目的になっていました。一つだけ、 reprendre (再び言う)の直接目的になっていた文もあります。
だとすると、ここも、ギユメの中全体が「jurer」の直接目的と取り、「jurer」は他動詞とするのが自然です。よく、

  Je vous jure que... (私は... であることをあなたに誓う・断言する→絶対に... です)

という表現を使いますが、他動詞の「jurer」は「誓う、断言する」という意味です。

その後ろも少し難解です。少しフランス語のできる人だと、「avec force」で「力を入れて、力を込めて」という意味になるので、これをカッコに入れて、他動詞「jurer」の直接目的は、その後ろの「imprécations (呪いの言葉)」かなと思った人も多いかと思います。
しかし前述のように、ギユメの中全体が「jurer」の直接目的と取ったほうが自然です。また、jurer imprécations (呪いの言葉を誓う?)というのも意味的に無理があります。

実は、普通は「force」は女性名詞で「力」という意味ですが、ほかに形容詞で「多くの、数々の」という意味もあります。辞書で「force」を引くと、一番最後に 1 ~ 2 行だけ書いてあり、「avec force exemples (数々の例とともに)」などという例文が載っています。この場合の「force」は beaucoup de ~(多くの~)と同様、後ろが無冠詞になります。
つまり、「avec force imprécations」を一まとまりにして捉える必要があります。

「imprécation」は女性名詞で、普通は複数形で使い、「呪いの言葉」という意味。もともと prier (祈る)に否定を表す接頭語 im- がついてできた言葉(に相当するラテン語)が語源です。
以上で、「しかし彼は、数々の呪いの言葉とともに、誓い始めた」となります。

ちなみに、この箇所は
  文語訳では「此の時ペテロ盟(うけ)ひ、かつ誓ひて... と言ひ出づ」
  新共同訳では「すると、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら... と誓い始めた」
  フランシスコ会訳では「そこで、ペトロは神罰もいとわないと誓って言い始めた、」
となっています。
この中では、このフランス語訳(Jérusalem 訳)は新共同訳に近いといえます。この 2 つの解釈によれば、ペトロは次に出てくるギユメ内の言葉のほかに、ここには具体的には書かれていない「呪いの言葉」も口にしたことになります。

 Je ne connais pas cet homme dont vous parlez

「connais」は他動詞 connaître (知っている)の現在(1人称単数)。「ne... pas」は否定「cet」は「その」
「dont」は de を含む関係代名詞で、英語の of which に相当します。この文は、関係代名詞を使わないと、次の 2 つの文に分かれます(詳しくは文法編の「関係代名詞使った文を 2 つの文に分ける方法」を参照してください)。

  Je ne connais pas cet homme. (私はその男を知らない)
  Vous parlez de cet homme. (あなたがたはその男について話している)

要するに、parler (話す)は前置詞 de と一緒に使う動詞(「parler de ~」で「~について話をする」という意味)で、もともと de の後ろにあったものが先行詞になるために、関係代名詞「dont」を使っているわけです。
元の文は、「私は、あなたがたが話しているその男を知らない」となります。

これがペトロ 3 度目の否認です。

【ここまでの訳】
しかし彼は、数々の呪いの言葉とともに誓い始めた、「私は、あなたがたが話しているその男を知らない」。

Et aussitôt, pour la seconde fois, un coq chanta.

「Et (そして)」の後ろの「aussitôt」は副詞で「すぐに」。

「pour」は前置詞で英語の for に相当し、「~のために」など色々な意味があります(一般に、前置詞は英語で意味を理解するのが近道です)。
「seconde」は 2 つしかない場合の「第 2 の」という意味
「fois」は前にも出てきましたが、「回」という意味。
「pour la seconde fois」で英語の for the second time と同様、「二回目に、二度目に」となります。

「un coq chanta」もさきほど出てきましたが、「chanta」は chanter (歌う、鳴く)の単純過去で、「鶏か鳴いた」となります。

【ここまでの訳】
そしてすぐに、二度目に鶏が鳴いた。

Et Pierre se ressouvint de la parole que Jésus lui avait dite :
«Avant que le coq chante deux fois, tu m'auras renié trois fois.»

 Et Pierre se ressouvint de la parole que Jésus lui avait dite

「Et Pierre (そしてペトロは)」の後ろの「ressouvint」は「再び」を意味する接頭語 re- がついていますが、s をダブって re がついているので、 res を省くと souvint となります。この sou- も「下から」という意味の接頭語なので、これも省くと vint となります。 vint は venir (来る)の単純過去(3人称単数)です。
venir (来る)に sou (下から)がついた souvenir は、「se souvenir de ~ (~を思い出す、 ~を覚えている)」という決まりきった表現でのみ使われる動詞です。
これに res がついた ressouvenir も、se ressouvenir de ~ (~を再び思い出す)という使い方をします。ただし、意味的には「再び思い出す」も「思い出す」も同じことなので、 res (再び)は省いてもたいして意味は変わりません。
「Et Pierre se ressouvint de ~」で「そしてペトロは~を思い出した」となります。

「parole」は女性名詞で「(口に出して言った)言葉」。「que」は関係代名詞。「lui (彼に)」は「ペトロに」。
「avait」は助動詞 avoir の直説法半過去(3人称単数)。「dit」は他動詞 dire (言う)の過去分詞で、「avait dit」で dire の直説法大過去(英語の過去完了に相当)
過去分詞「dit」には e がついています。これは、「avoir + p.p. の場合は、直接目的(OD)が動詞よりも前にくる場合のみ、OD に過去分詞の性数を一致する」という規則によるものです。ここでは、「言葉を」言ったわけなので、「dit」の直接目的(OD)は「la parole (言葉)」(女性名詞の単数形)です。これが先行詞になって前に出ているので、女性単数を意味する e がついているわけです。

この文では、「la parole que Jésus lui avait dite (イエスが彼に言った言葉)」とギユメの中とが同格(つまりイコール)の関係にあります。

 Avant que le coq chante deux fois, tu m'auras renié trois fois.

これはさきほどのイエスによるペトロの否認の予告の言葉の主要部分を再び引用したものなので、解説はそちらを参照してください。

【ここまでの訳】
そしてペトロは、イエスが彼に言った「鶏が 2 回鳴く前に、あなたは私のことを 3 回否認しているだろう」という言葉を思い出した。

Et il éclata en sanglots.

「Et (そして)」の後ろの「 il 」はペトロを指します。
「éclata」は éclater の単純過去(3人称単数)。第 1群規則動詞なので、単純過去は a 型の活用をします。
éclater は自動詞で「破裂する、(戦争などが)勃発する、(感情が)爆発する」。辞書の用例には、 éclater de rire (突然笑い出す)や、ここで使われている éclater en sanglots (わっと泣き出す)などが載っているはずです。
「sanglot」は男性名詞で、「しゃくりあげて泣くこと、嗚咽(おえつ)」。主に複数形で使用します。語源的には「しゃっくり」を意味するラテン語に由来します。

以上、『マルコによる福音書』第 14 章の最後の 3 つの文は、すべて Et (そして)で始まっています。 Et (そして)で文をつなげていくというのは、ややもすると小学生の作文のような幼稚な文章になりかねませんが、あえて平板で単調な接続詞を用いて、抑制の効いた語り口にすることで、逆に劇的な内容を際立たせているように感じられます。
この最後の文などは、短い文なので、本来なら前の文につなげてもよさそうなものですが、わざと切り離して書くことで、ぽつりぽつりとした味わが出ていて、何とも感動的です。

【ここまでの訳】
そして彼はわっと泣き出した。









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