「北鎌フランス語講座 - 文法編」と連動し、短い例文を使って徹底的に文法を説明し、構文把握力・読解力の向上を目指します。

フランス語訳聖書 イエスの死

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『ヨハネによる福音書』第 19 章 28~30 節 La mort de Jésus (イエスの死)。
十字架上のイエスが息を引き取る場面です(La Bible de Jérusalem 版)。

  Après quoi, sachant que désormais tout était achevé pour que l'Écriture fût parfaitement accomplie, Jésus dit : « J'ai soif. »
  Un vase était là, rempli de vinaigre. On mit autour d'une branche d'hysope une éponge imbibée de vinaigre et on l'approcha de sa bouche. Quand il eut pris le vinaigre, Jésus dit : « C'est achevé » et, inclinant la tête, il remit l'esprit.

Jean 19, 28-30

Après quoi, sachant que désormais tout était achevé pour que l'Écriture fût parfaitement accomplie, Jésus dit : « J'ai soif. »

 Après quoi

「Après (~のあとで)」は前置詞。その後ろの「quoi」は関係代名詞。「文法編」の表のとおり、「2 つの文に分けたとき、先行詞の前に de 以外の前置詞がつく」場合で、先行詞が「前の文脈全体」である場合は、quoi を使用します。
「Après quoi」は逐語訳すると「それのあとで」。「Après cela」と言っても同じです(cela は指示代名詞)。「ついで」という感じです。

その次の 2 つのコンマの間(sachant... accomplie)はカッコに入れることができます。このように、一般に挿入句は前後にコンマを打つことが多いといえます。

2 つのコンマの間を抜かして、先に「Jésus dit」のところを見ておきましょう。

 Jésus dit

「Jésus」はもちろん「イエス」です。フランス語では語末の s は原則として発音せず、 u は「ウ」ではなく、口をすぼめて「ユ」に近い発音になるため、「ジェズュ」と発音します。
ちなみに、「キリスト」を意味する「Christ」は「クリスト」と発音しますが、「Jésus」と組み合わさって「Jésus-Christ」となった場合は、伝統的にカトリックでは語末の st を発音せずに「ジェズュクリ」と発音し、プロテスタントでは st も発音して「ジェズュ クリスト」と発音します。
この「Jésus-Christ」のカトリックでの発音「ジェズュクリ」は、

  Jésus crie. (イエスは叫ぶ)

と同じ発音になります。「crie」は自動詞 crier (叫ぶ)の現在(3人称単数)です。いったんこのことに気づくと、イメージが重なって頭から離れなくなるかもしれません。

その後ろの「dit」は他動詞 dire (言う)の単純過去(3人称単数)
dire の直説法現在と単純過去は、単数形(je dis, tu dis, il dit)が完全に同じ形になります。どちらの時制なのかは、前後の文脈で判断するしかありません。
このフランス語版聖書では、過去の行為は基本的に単純過去で書かれているため、ここも単純過去と取ります。

次に、2 つのコンマの間の前半部分に移ります。

 sachant que désormais tout était achevé

「sachant」は savoir (知っている)の現在分詞で、分詞構文になっています(後述)。
savoir は他動詞で、接続詞 que 以下(...ということ)が直接目的です。
「désormais」は「以後は」「今や」という意味の副詞(だいたいこの 2 つの意味を覚えておけば対応可能なはずです)。
「tout」は主語になっているため、「すべての」という意味の形容詞ではなく、形容詞 tout が名詞化(代名詞化)した「すべて(すべてのもの)」という意味です。

「était」は être の直説法半過去(3人称単数)です。
なぜ半過去かというと、主節の動詞(dit)が単純過去のため、普通に現在のことを言おうとしても、時制の一致によって「過去における現在」で直説法半過去になるからです。

「achevé」は、他動詞 achever (達成する、成し遂げる)〔英語 achieve〕の過去分詞と同じ形ですが、形容詞化していると取ったほうがわかりやすいでしょう。辞書にも「achevé」で形容詞として載っており、「終わった」「完了した」と書かれています。つまり、「終わった状態の」「成し遂げられた状態の」という、完了の意味合いを含んだ形容詞です。

この「sachant... achevé」が分詞構文です。ここでの分詞構文の意味は、
  「時(同時・継起)」 と取るなら、「...ことを知り、」
  「原因・理由」 と取るなら、「...ことを知ったため、」
となります。どちらとも取れます。
ここまでで、「今やすべてが成し遂げられた(状態である)ことを知り(知ったため)、」となります。

 pour que l'Écriture fût parfaitement accomplie

「pour que」は接続詞句で「...するために」(または「...するように」)。「pour que」の後ろは自動的に接続法になるので、「fût」という接続法が使われています。
「fût」は être の接続法半過去(3人称単数)。
「接続法」の中でも、なぜ接続法「半過去」という時制が使われているかというと、この文の主節の動詞(dit)は単純過去であり、「主節が過去の場合は、主節と同時のことを言おうとしても接続法半過去になる」からです。

「écriture」は女性名詞で「書かれたもの」などの意味がありますが、大文字にすると「聖書」の意味になると辞書に書いてあります。ここでは、「聖書に書かれたこと」と訳してもよいかと思います。
「parfaitement」は副詞で「完璧に」。
「accomplie」は他動詞 accomplir (完遂する、成就する)〔英語 accomplish〕の過去分詞 accompli に女性単数の e がついた形。過去分詞は、être + p.p. の場合は主語に性数を一致するので、ここでは「Écriture」が女性名詞の単数形なのに合わせて、過去分詞に e がついています。
ここまでで、「聖書に書かれたことが完璧に成就されるように」となります。

 « J'ai soif. »

«  » は「ギユメ」と呼ばれる引用符で、日本語の「 」に相当します。
「soif」は女性名詞で「(喉の)渇き」。「avoir soif」は逐語訳では「渇きを持つ」ですが、無冠詞なのでわかるように熟語化しており、「avoir soif」で「喉が渇いた」という意味。

【ここまでの訳】
「ついで、今やすべてが成し遂げられたことを知り、聖書に書かれたことが完璧に成就されるように、イエスは言った、『喉が渇く』。」

Un vase était là, rempli de vinaigre.

 Un vase était là

「vase」は男性名詞で「器(うつわ)」。末尾が e で終わるのに、女性名詞ではないので要注意。
「était」は être の直説法半過去(3人称単数)。ここでは、être は第 2 文型をとる繋合動詞の「~である」という意味ではなく、第 1 文型をとる「存在する」という意味で使われています。「là」は場所を表す副詞で「そこに」「そこには」〔英語の there〕。
コンマの前までで、「ひとつの器がそこに存在していた(あった)」となります。

 rempli de vinaigre.

次に、文末の「vinaigre」は男性名詞で「酢」。もともと、男性名詞「vin (ワイン)」と形容詞「aigre (酸っぱい)」がくっついてできた単語です。日本語訳の聖書では「酸いぶどう酒」と訳されています。

「rempli」は remplir (満たす)の過去分詞。 remplir (満たす)という動詞は基本的に次のような使い方をします。

  remplir A de B (A を B で満たす)

つまり、第 5 文型をとる「直接他動詞(2)」のタイプの動詞で、前置詞 de と一緒に使います。しかし、この「rempli」の前にはなぜコンマがあり、過去分詞「rempli」はどのような働きをしているのでしょうか。

「文法編」の「分詞」のページの「分詞・分詞構文への変換」にならって、ここで「remplir」を分詞・分詞構文へと展開してみましょう。

1.基本的な使い方 remplir A de B「A を B で満たす」
2.受動態 A est rempli de B「A は B で満たされる」
3.分詞 A rempli de B「B で満たされた A」
4.分詞構文 A, rempli de B, ...「A は、B で満たされて...」

この文では、A が「Un vase (器)」、 B が「vinaigre (酢)」です。

1.基本的な使い方remplir un vase de vinaigre器を酢で満たす
2.受動態un vase est rempli de vinaigre器は酢で満たされる
3.分詞un vase rempli de vinaigre酢で満たされた器
4.分詞構文un vase, rempli de vinaigre...器は、酢で満たされて...

となります。分詞構文は基本的に前後にコンマがつくため、ここでも「rempli」の前にコンマがあると説明することができます(文末に置かれているので後ろにはコンマはありませんが)。
分詞構文の意味は「付帯状況」に近いでしょう。逐語訳すると、
  「ひとつの器がそこにあった、酢で満たされて。」
または
  「ひとつの器がそこにあった、酢で満たされた状態で。」
となります。

ただし、分詞構文ではなく、分詞として前の名詞に掛かると取ることもできます。分詞は「直前の」名詞に掛かるのが基本ですが、ここでは「Un vase」と「rempli de vinaigre」の間があいているため、直前の言葉に掛けないようにするためにコンマが付いていると説明することもできます。つまり、通常の語順にすると

  Un vase rempli de vinaigre était là. (酢で満たされたひとつの器がそこにあった)

となるべき所ですが、こうすると主語(S)の「Un vase rempli de vinaigre」が動詞(V)の「était」よりも長くなって「頭でっかち」になるため、主語の中に含まれる修飾的な要素(rempli de vinaigre)だけを後ろに持ってきて、見かけ上は分詞構文のような形にしたと解釈することもできます。

このように「分詞構文」と「前の名詞に掛かる分詞」のどちらにも解釈可能ですが、訳すときは後者の感じで訳したほうが、ここではすっきりします。

なお、以上の例文で、「vinaigre (酢)」はすべて無冠詞になっています。本来なら、飲む対象となる場合は、分量を示す部分冠詞がつくべき所ですが、前置詞 de の後ろでは部分冠詞は必ず省略されるという規則により、無冠詞になっています。

【ここまでの訳】「そこには酢で満たされたひとつの器があった」

On mit autour d'une branche d'hysope une éponge imbibée de vinaigre et on l'approcha de sa bouche.

 On mit autour d'une branche d'hysope une éponge imbibée de vinaigre

この「On」は「誰かが」という訳がぴったりです。「名を記すほどの者でもない、周囲の誰かが」という感じです。
「mit」は他動詞 mettre (置く)の単純過去(3人称単数)。「autour de ~」は「~のまわりに」という意味の前置詞句。「branche」は女性名詞で「枝」。「hysope」は地中海に自生する植物の名前で「ヒソップ(柳薄荷)」。
「éponge」は「スポンジ」ですが、もちろん工業製品ではなく、天然の「海綿」。英語だと sponge ですが、このようにフランス語の綴りの é が英語の s に相当する単語はかなり存在します(étudiant = student = 学生, établir = establish = 樹立する、など)。

「imbibée」は他動詞 imbiber (浸す)の過去分詞 imbibé に女性単数の e がついた形(分詞として使う場合は、直前の名詞に性数を一致します)。
imbiber も一つ前の文で出てきた remplir と同様、第 5 文型をとる「直接他動詞(2)」のタイプの動詞で、「imbiber A de B」という使い方をします。「A」が直接目的なので、わざと直接目的らしく「A」に「を」をつけて「A を B で浸す」と訳し、さきほどと同様に展開してみましょう。

1.基本 imbiber A de B「A を B で浸す」
2.受動態 A est imbibé de B「A は B で浸される」
3.分詞 A imbibé de B「B で浸された A」
4.分詞構文 A, imbibé de B, ...「A は、B で浸されて...」

この文では、A が「une éponge (海綿)」、 B が「vinaigre (酢)」です。

1.基本imbiber une éponge de vinaigre海綿を酢で浸す
2.受動態une éponge est imbibée de vinaigre海綿は酢で浸される
3.分詞une éponge imbibée de vinaigre酢で浸された海綿
4.分詞構文une éponge, imbibée de vinaigre...海綿は、酢で浸されて...

「éponge」は女性名詞の単数形なので、過去分詞は性数を一致をして e がつきます。

この文では「3」の「酢で浸された海綿」という形が使われていますが、要するに「酢を浸した海綿」という意味です。

さきほどの文と同様、「vinaigre (酢)」は飲む対象となる場合は分量を示す部分冠詞がつくべき所ですが、前置詞 de の後ろでは部分冠詞は必ず省略されるため、無冠詞になっています。

さて、この文の最初のほうに出てきた「mit」の直接目的はどれかというと、「autour d'une branche d'hysope (ヒソップの枝のまわりに)」はカッコに入るため、「une éponge imbibée de vinaigre (酢を浸した海綿)」が直接目的です。
ここまでで、「誰かが酢を浸した海綿をヒソップの枝のまわりに置き、」となります。

 et on l'approcha de sa bouche.

「et (そして)」の後ろの「on」は、おそらく文頭の「On (誰かが)」と同じ人なのでしょう。「on」はたとえ同一人物で 2 回目に出てきても「il (彼)」に置き換わることはありません。
「approcha」は approcher (近づける)という第1群規則動詞の単純過去(3人称単数)。
この approcher も、

  approcher A de B (A を B に近づける)

という使い方をする第 5 文型をとる動詞で、ここでは A が「l'」、 B が「sa bouche」に相当します。
「l' (それ)」は「une éponge imbibée de vinaigre (酢を浸した海綿)」を指し、「sa (彼の)」は「Jésus (イエス)」を指します。「bouche」は女性名詞で「口」。
ここまでで、「それをイエスの口に近づけた」となります。

イエスは十字架上で磔になって両手を動かせないため、誰か(on)が機転を利かせて、このようにしたのでしょう。

【ここまでの訳】
「誰かが酢を浸した海綿をヒソップの枝のまわりに置き、それをイエスの口に近づけた。」

Quand il eut pris le vinaigre, Jésus dit : « C'est achevé » et, inclinant la tête, il remit l'esprit.

 Quand il eut pris le vinaigre,

「Quand (...とき)」〔英語の when〕の後ろの「il」は、「Jésus (イエス)」を指します。
「eut」は助動詞 avoir の単純過去(3人称単数)。「pris」は他動詞 prendre (英語の take)の過去分詞。この prendre は「取る」「得る」など、英語の take と似た色々な意味がありますが、ここでは「(食べ物や飲み物を)摂取する、口にする」という意味です。
「avoir の単純過去+prendre の過去分詞」で「prendre の前過去」になります。前過去は単純過去とセットで使用し、単純過去の直前に完了した行為を表します。原則として、「~するやいなや」と訳します。ここでは、次に出てくる主節の「dit (言った)」が dire (言う)の単純過去なので、その直前に完了したことを示します。つまり「prendre (口にする)」という行為と「dire (言う)」という行為の間が短いことを表しており、緊迫感を出しています。

ここで冒頭の「Quand il」の「il」について補足しておきますと、この「il」はもちろん「Jésus」を指しますが、厳密には、これは前に出てきた「Jésus」を指しているわけではありません。「Jésus」という言葉は、かなり前に出てきており、そのあとで「Un vase」や「On」という主語で始まる文が挟まっており、間が空きすぎています。普通は代名詞は前に出てきた名詞を指しますが、従属節が前にきた場合は、従属節の中の代名詞が、後ろにくる主節の中の名詞を指すことができます。ここは「Quand il eut pris le vinaigre」が従属節、「Jésus dit : « C'est achevé »」が主節です。そのため、ここも正確には、「il」は後ろの主節で出てくる「Jésus」を指しています。

ここまでで、「(イエスが)酢を口にするやいなや」となります。

 Jésus dit : « C'est achevé »

「Jésus dit」はさきほど出てきました
「achevé」についても、さきほど説明したとおりです。
ここは「イエスは言った、『成し遂げられた』」となります。

 et, inclinant la tête, il remit l'esprit.

「et (そして)」の後ろの「inclinant la tête」は、コンマとコンマに挟まれ、なおかつ -ant という現在分詞の語尾をもつ言葉で始まっているので、少し慣れれば「現在分詞を使った分詞構文だな」と勘が働くようになります。
「inclinant」は他動詞 incliner (傾ける)の現在分詞。「tête」は「頭」。
「incliner la tête」で「頭を傾ける」→「頭を下げる、お辞儀をする」という意味にもなりますが、ここでは文字通り「頭を傾ける」。
「inclinant la tête」は分詞構文で、「単純接続」に近く、「頭を傾けて」と訳せます。
「il」はもちろん「Jésus (イエス)」を指します。
「remit」は接頭語 re を取れば mit となり、これはさきほども出てきた mettre の単純過去と同じなので、元の形は remettre だとわかります。接頭語 re はもともと「再び」の意味なので、「再び置く」「(元の状態に)戻す」などの意味がありますが、ここでは「(本来持つべき人に)引き渡す」という感じです。

「esprit」は英語の spirit に相当する男性名詞で、

  le corps et l'esprit (肉体と精神)

というように「精神」の意味で使うことが多い言葉ですが、辞書の後ろのほうに「(神の)息吹」という意味も載っているはずです。ちなみに、英和辞典ですが『ランダムハウス英和辞典』で英語の spirit を引くと「(神が生命を吹き込む)息」と書いてあります。この訳を使うなら、「神から吹き込まれた息を、(再び神のもとに)引き渡す」という感じになります。

【ここまでの訳】
「酢を口にするやいなや、イエスは言った、『成し遂げられた』。そして頭を傾け、息を引き渡した。」









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